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今回は、弁護士になって初めて取り組んだ国選弁護事件について書きたいと思います。
まず、具体的な内容に入る前に確認ですが、裁判は大きく分けて刑事裁判と民事裁判に分けられます。人にもよりますが大抵の弁護士は、民事裁判の方を中心にやり、片手間といっては失礼かもしれませんが、年に数件刑事事件も取り扱う程度だと思います。もちろん刑事弁護のみをされている先生もいますし、ある程度年齢がいくと、「もう刑事事件はしない」という先生もいます。
私は、一般的な弁護士と同様で民事が中心で、刑事事件は年に4,5件くらいです。
今回書く事件は、初めて取り組んだということもありますが、いろいろと大変だったので、非常に印象に残っています。
事件は,単純なもので、スーパーで食料品など2000円程度を万引きして、逮捕されたというものです。
勘の鋭い方は、この時点で、もう気づかれているかもしれませんが、もしこれが初めての犯行であれば、通常2000円分を万引きした程度では、逮捕まではされないことが多いと思います。逮捕された理由は、前科・前歴があったこと、これまで何度も同様の犯行をしていることがある程度確認されていたことからだと思います。
逮捕されて、次に勾留されます。聞いたことのある方もいらっしゃると思いますが、逮捕・勾留で通常約23日間身柄を拘束されます。拘束場所は、通常、警察署の留置施設です。なかなか23日より前に釈放されることは難しいように思います。23日で検察官が起訴するかを決定します。不起訴になればそこで釈放ですが、起訴された場合には、そのまま判決が出るまで身柄拘束が続きます。ただ拘束場所が警察署から拘置所に替わるくらいです。
国選弁護人は、勾留後に選任されます。私もその被疑者が勾留されると時に選任されました。
選任されるとまずは、接見に行きます。警察署内に面会室があります。面会室はよくドラマで見るようなアクリルの板で仕切られた部屋で会話します。アクリル板のせいで、通常よりも声が通りにくいので、大きな声で話します。被疑者がどういうことをして逮捕されたかくらいは、事前にわかっているのですが、それ以外は全く分かりません。そのため、具体的何をしたのか聞いたり、前科はあるか聞いたり、します。よく思われたいのかわかりませんが、本当は前科があるのにないと嘘を言う人が結構います。前科があるかは、起訴されるか、実刑になるかに大きく影響するので嘘を言われると結構困ります。確かこの人も初めは、前科はないと言っていました。
あと面会で聞くのは、誰か連絡をとりたい人はいるかです。この被疑者は、奥さんに連絡をとって面会に来てほしいと言ってほしいとのことでした。電話番号を聞くと電話がないとのことでした。仕方ないので、車で1時間くらいかけてその家に行くと、奥さんが出てきて、普通に会話できる人で「面会に行ってくださいね」といえば、奥さんはすぐにわかりましたといっていたので、安心して仕事したなあ、とか思いつつまた1時間かけて帰りました。
そして2日後にまた警察署に接見に行くと、奥さんは来てないとのこと。おかしいなと思いつつ、もう一度行くことをお願いされたので、まあいいかと思い、もう一度行きました。すると、また奥さんは、ちょっと用事があって行けなかったんですが、すぐに行きますとの回答でした。それでまた安心して帰りました。
しかし、被疑者に確認したら、まだ来てないとのこと。
一旦奥さんは置いておいて、次は、勤務先の社長に連絡をとってほしいとのことでしたので、連絡をとって、会いに行きました。万引きは、刑法上は窃盗罪です。窃盗のような財産犯の場合に、被害を弁償することが何よりも重要になりますので、私は、その社長にお金を出してもらうお願いをしようと思いました。
社長に会って話を聞きましたが、その社長は、見た目は結構怖かったのですが、過去に犯罪をした人を積極的に雇ってあげて、更生する支援をしているようなとてもすごい方でした。話を聞いていると涙が出そうになるほどでした。
被害弁償についてもすぐにお金を用意して頂き、また面会に行って、被疑者にお金を入れてくれるとのことでした。
社長に被疑者のことを聞きましたが、過去に結構辛い経験もしていることや、過去に窃盗をして裁判にかけられたことがあることを聞きました。このときに、被疑者が前科はないという嘘をついていたことがわかりびっくりしました。
また、その被疑者の奥さんのことに話が及ぶと、なぜか、その奥さんのことをとても悪く言っていました。「どうしようもない」とか「救いようがない」とか言っていました。緒の時はまだ奥さんは私には普通に対応していたのでにわかには信じられませんでした。
しかし、その後、私も奥さんにはずいぶん苦労をかけられました。初めてだったこともあって、できる限り被疑者の願いはかなえなければいけないとの思いもあり、本当に苦労させられました。
今回はこれくらいにさせて頂こうと思います。

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2015.08.15 Sat l 弁護士のつぶやき l コメント (0) トラックバック (0) l top
ある地方の法律事務所に入所して,弁護士になって1年ちょっと経ちました。去年1年間は,修習生のような遊びの時期とは異なり、忙しく過ごさせていただきました。1年経って、ようやく少しは余裕が出てきましたので、ブログを再開させて頂こうと思います。
修習生の時に書いたブログを読み返すと、なにもわかってないなあと思う箇所もあれば、もう忘れていて意外と参考になるなと思う箇所もあって、驚きがあります。
ブログの記事のテーマですが、基本的には、担当した事件について、できるだけ具体的に書いていこうと思います。具体的に書きすぎると守秘義務との関係で大変なことになるのですが、そうすると、面白味というか、どこがどう大変なのかが伝わりませんので、がんばりたいと思います。私を日本のどこかの弁護士くらいにしか特定できないこのブログは結構貴重なものかもしれません。
そろそろ内容に入っていきます。
今回は、再開後1回目ですし、頑張りすぎると次回から大変になりますので、軽めにしておきたいと思います。
テーマは刑事弁護についてです。弁護士になって1年余経ちましたが、私は5件刑事事件を担当しました。所属事務所にもよりますが、一般的には少ない方かもしれません。理由は簡単で、私のいる地域は事件が少ないからです。
刑事事件は、事件の受け方で国選事件と私選事件に分けられます。国選事件は、国から弁護報酬をもらって、弁護を行うもので、私選事件は、被疑者や被告人本人などから報酬を頂くものです。
多少知識をお持ちの方は、国選事件だと弁護士のやる気がなくて、いい弁護をしてもらえないから、私選にした方がいいということを聞いたことがあると思います。
しかし私個人の意見としてですが、確かに私選の方が報酬は多くなりますが、それでやる気が変わるとかいい弁護をすることはありません。犯行を自白した人の事件(「自白事件」といいます。)の場合、やることは、被害弁償、保釈の請求、公判において情状弁護のための質問準備くらいですので、私選か国選かでそれほど差がでることはないと思います。むしろ私選で報酬を払うくらいなら、被害弁償を多くしたり、保釈金にまわした方がいいと思います。他方,犯行を否認している事件(「否認事件」といいます。)の場合には、しっかり調べてもらわないといけないので、私選もありかと思います。ちなみに否認事件についてですが、結構多いのではないかと思われている方もいると思いますが、私は、今のところ1件もありません。
私が扱った事件は、窃盗、窃盗、DVがらみの暴行、覚せい剤、詐欺の5件です。私の所属する弁護士会は、基本的に事件の内容で区別せずに弁護士に振り分けるので、殺人のような裁判員裁判になる重大事件も新人弁護士が当たることもあります。私は、新人向けの事件が当たり、ほっとしました。
具体的な事件については、次回に回しますが、今回最後に刑事事件について言いたいのは、これは弁護士にならないと分からなかったことですが、被疑者や被告人と話をするのは結構「癒し」になることです。別に相手は檻の中でこっちは外にいることによる優越感ということではないです。弁護士の業務で大変なのは、依頼者への対応です。無理難題を言ってくる依頼者にちゃんと説明して、納得してもらうことは非常に骨が折れます。多くの依頼者はそうではないのですが、たまにいます。そんな時に、刑事事件で警察署に入っている被疑者と接見すると、行くだけで、感謝してもらえるので、この人のために頑張ろうと思うようになり、癒されます。
こんなことを書いていて自分はゲスいなと思いましたが、去年それで何度か気持ちを助けられましたので事実です。
次回は、はじめにやった窃盗事件についてできるだけ具体的に書いていこうと思います。
2015.06.27 Sat l 弁護士のつぶやき l コメント (0) トラックバック (0) l top