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● はじめに
私は、弁護士事務所での研修を終え、現在裁判所の民事部での研修中です。弁護研修では、依頼者の主張を法的に構成して、裁判所への文書を作成することを学びました。現在は裁判官が、提出された書面について検討し、またもう一方の当事者の反論が書かれた書面を検討し、どちらの主張が正しいのかを判断する裁判官の判断手法を学んでいます。
そこで2回に分けて弁護士によって、依頼者の生の主張が法的主張にまとめられ、そしてその主張が正しいと裁判官に認められるまでの流れについて、みていきたいと思います。今回は、原告となる依頼者から相談を受け、弁護士が訴状を作成し、裁判所に提出し,そして裁判所から被告に訴状が送られ、被告が反論を記載した答弁書を作成するまでを見ていきます。
なお不正確不十分な点もあるかと思いますが、あらかじめご了承ください。
● 依頼者(原告)の相談から訴状の作成
まず依頼者は、当然のことですが、相手方に対して、お金を払ってもらいたいとか、土地を引き渡してほしいとかいった何らかの「要求」をもって相談に訪れます。(たまにそもそもどうしてほしいのか不明である場合や、とにかく訴えて相手に迷惑をかけてやりたいという人もいますが、普通の弁護士はそのような依頼は断ります。)相談では、弁護士は、依頼者にどういう「理由、事実」があるから金銭や土地を求めるのか、ということ聞き出します。
たとえば、依頼者は相手方に車を売ったが、相手方が代金を支払ってくれないから、代金としてのお金を払ってもらいたいとか、依頼者は土地を相手方に貸していて、賃貸借契約の期間が終わって契約が終了したのに、相手方が土地をまだ使用しているから、土地を引き渡してほしいとか、です。
 弁護士は依頼者から事情を聞きだし、訴訟を提起することを決めた場合、訴状(裁判所に対して、判断を求めるという最初に提出する書面)を作成します。
訴状は、請求の趣旨と請求の原因を記載します。請求の趣旨とは、こういう判決がほしいということです。例えば「被告は,原告に対し,100万円を支払えとの判決を求める」とかいったことです。請求の原因とは、こういう事実があるから、判決を求めるということです。たとえば、「原告は、被告に対し、自動車を売った」とかいったことです。訴状にはさらに証拠を添付します。この例でいうと「売買契約書」などです。
 訴状ができたら、裁判費用として印紙を貼り付け、裁判所に提出します。
● 被告の答弁書の作成
裁判所に訴状が提出されると、訴状が形式上適法であるか審査し、その後、相手方(被告)に送られます。これを受けて、相手方は、通常は弁護士に依頼して、答弁書を提出します。通常は、原告の要求を認めませんから「原告の請求を棄却するとの判決を求める」と記載します。そして、請求の原因に対する「認否」をしなければなりません。原告の主張する様々な事実を否定するとか認めるとかです。これは、なんの事実が争いになっているのか裁判官に明確にするために行なわれます。
ここで仮に答弁書を被告が提出しない場合、どうなるかみていきます。答弁書を一定期間内提出しない場合、裁判所は、被告が原告の主張を争わないものとして、すぐに原告の請求を認めて、判決を出してしまいます。たとえ契約書を原告が偽造していたとしてもです。判決が出ても、控訴(判決が不服であるため取り消してもらいたいとの高等裁判所への申立て)せず放置した場合、判決が確定します。そうすると、原告は強制執行を申立て、被告の財産を差押え、強制的に判決内容を実現します。例えば、被告の土地を差し押さえ、競売にかけて、その売却代金で原告に100万円が支払われるようにします。判決確定後に被告が「契約はない」といってみても、もうどうすることもできません。ですから訴状がきたら、放置だけはしないようにしてください。
答弁書が出されると、裁判所は、被告が否定した一定の事実が争点になるとして、その事実を証明する証拠を検討していくことになります。これ以後については、次回にさせていただきます。


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2013.03.14 Thu l 司法修習生のつぶやき l コメント (0) トラックバック (0) l top