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前回の続きになります。

●証拠による事実の認定
前回、被告が存在を否定した事実が争点となるとして、その事実を証拠から認定していくことになると書きましたが、他方争いのない事実については、そのまま裁判所は認定してしまいます。そのため「認否」は慎重にしなくてはなりません。もっともなんでも争っていると、いつまでたっても訴訟が終わりませんので避けなければなりません。
裁判所はある事実があるかについて判断する材料となる証拠は、当事者双方に出してもらう必要があります。裁判所が勝手に真実を発見してくれるわけではありません。私が弁護士事務所で研修しているときに、弁護士が証拠となる書類を出してくださいとかあの時の話を聞かせてくださいとかお願いしているにもかかわらず、あまり協力的ではない依頼者のおじいさんがいました。その理由を聞いてみると、「私はこれまで間違った行動はせず、まじめに生きてきたのだから、裁判所はわかってくれるはずだ」というのです。たしかにそのおじいさんは、中学を出てから家の仕事を50年以上してきて、その間自分の給料の大半を家に入れ続けていたような方でした。しかし裁判所はこのような生き方をみて判断するのではありません。
 証拠は、契約書などの文書や証人などさまざまなものがあります。この中で重視されるのは、文書のほうです。証人尋問は通常の訴訟では終盤に行なわれますが、証人尋問をする前に裁判官はすでに争いとなっている事実が認められるかについて判断していることは多いと思います。証拠である文書から判断しているのです。そのため文書は大切に保管しておくことはもちろん、ちゃんとつくっておくことが重要です。なにもちゃんとした契約書をどんな時も作っておく必要があるわけではありません。毎日つけている日記に書くとか、メモに書いておくとかでもかまいません。そういったものが紛争になる前に書かれたのであれば、裁判所は重要な証拠であると考えます。
文書からでは、判断ができないときには証人尋問での受け答えを検討していくことになります。ここで研修して思ったのは、当事者は嘘をつくことということです。裁判官は、時間の流れを重視して整理していますので、客観的な時間の流れと合わないことを証言すると、即座に見破ります。嘘をついていることをその場で指摘せず、淡々とその証言は信用できないと判断します。
 またそもそも自己に有利な事情についていくら話しても,それを信用することは通常ありません。その当事者にとって不利な事実のみを認定します。これは自己に不利な事実をいう場合、通常嘘はつかないため信用できるということからいえます。
 このように裁判所は、事実を証拠から認定して、結論を導きます。
判決では争いとなっている事実が認められる(または認められない)から、この請求は認められる(または認められない)ということになります。
●まとめ
 前回から、引き続いて裁判所の認定方法についてみてきましたが、今回最も言いたいことは、紛争を防ぐためにも、仮に紛争になった場合に裁判で負けないためにも文書に残しておくことが重要であるということです。
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2013.04.03 Wed l 司法修習生のつぶやき l コメント (0) トラックバック (0) l top